クリニックのホームページ、何を載せるべきか
クリニックのホームページは医療広告規制の対象です。厚生労働省の医療広告等ガイドラインをもとに、載せられる基本情報と、比較優良広告・誇大広告・体験談・治療前後の写真など避けるべき表現の考え方を整理します。
KEY POINTS
この記事の要点
- クリニックのホームページは医療広告規制の対象で、掲載内容は医療広告として扱われる
- 「No.1」などの最上級表現は客観的事実でも、患者の体験談は広告可能な範囲でも掲載できない
- 自由診療を載せるなら、治療内容・費用と主なリスク・副作用をセットで記載する必要がある
クリニックのホームページを作るとき、まず考えるのは「どうすれば選んでもらえるか」でしょう。ところが医療機関の場合、この問いにいきなり答えようとすると、規制に触れる表現に行き着いてしまうことがあります。
医療機関のウェブサイトは、かつては原則として広告規制の対象外とされ、関係団体の自主的な取組に委ねられていました。しかし平成29年の医療法改正により、ウェブサイトも他の広告媒体と同様に規制の対象とされ、虚偽または誇大等の表示が禁止されて是正命令や罰則の対象となりました(厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正)。
この記事では、同ガイドラインをもとに、ホームページに載せられる情報と避けるべき表現の考え方を整理します。個別の表現の可否は状況により判断が分かれますので、実際の制作にあたっては最新のガイドラインをご確認ください。
ホームページが「広告」に当たる条件
ガイドラインでは、次の3つの要件をいずれも満たす場合に医療広告に該当するとされています。
- 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
- 医業等を提供する者の氏名・名称、または病院・診療所等の名称が特定可能であること(特定性)
- 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する内容であること
自院のホームページは、通常この3つを満たします。したがって、掲載する内容は医療広告として扱われるという前提で考える必要があります。
なお規制の対象者は医療機関に限られず、広告代理店やアフィリエイター、患者や一般人も含め「何人も」対象とされています。制作を外部に委託していても、医療機関側の責任がなくなるわけではありません。
載せるべき基本情報
医療広告として広告可能な事項は、医療法第6条の5第3項および広告告示で定められています。ホームページに掲載すべき基本情報の多くは、この範囲に含まれます。
- 医師・歯科医師である旨
- 診療科名(政令で定められた診療科名の範囲)
- 医療機関の名称、電話番号、所在地、管理者の氏名
- 診療日、診療時間、予約診療の有無
- 保険医療機関である旨など、法令の規定に基づく指定を受けている場合はその旨
- 施設、設備、従業者の員数に関する事項
- 診療に従事する医師等の氏名、年齢、性別、役職、略歴
- 医療安全の確保、個人情報の適正な取扱い、相談への対応に関する措置
- 連携している他の医療機関や福祉サービス提供者に関する事項
- 提供される医療の内容に関する事項(厚生労働大臣が定めるものに限る)
所在地には郵便番号や最寄り駅からの道順、案内図、地図も含まれ、電話番号には受付時間の記載も可能とされています。患者が受診前に知りたいのは、何時までやっているのか、予約は必要か、どうやって行くのかといった情報であることが多く、こうした基本情報を正確に、探しやすい形で整えることの価値は高いと考えられます。
載せてはいけない表現
ガイドラインでは、次のような広告が禁止されています。
虚偽広告
内容が虚偽にわたる広告は、罰則付きで禁じられています。ガイドラインでは「絶対安全な手術です!」「どんなに難しい症例でも必ず成功します」といった表現が例示されており、絶対安全な手術は医学上あり得ないため虚偽広告として取り扱われるとされています。
また、「◯%の満足度」のように根拠や調査方法を示さずに結果らしきものだけを示すもの、加工・修正した術前術後の写真も虚偽広告に当たるとされています。
比較優良広告
他の医療機関と比較して自院が優良である旨の広告は認められません。ガイドラインでは、「日本一」「No.1」「最高」などの最上級表現は、客観的な事実であったとしても禁止される表現に該当するとされています。
例示されているものには「肝臓がんの治療では、日本有数の実績を有する病院です。」「当院は県内一の医師数を誇ります。」のほか、「著名人も当院で治療を受けております。」といった、著名人との関連を強調する表現も含まれます。
誇大広告
虚偽とまでは言えないものの、事実を不当に誇張したり人を誤認させる表現も禁止されます。「人を誤認させる」とは、一般人が広告内容から受ける印象や期待感と実際の内容に相違があると常識的に言えれば足りるとされています。
例示には「比較的安全な手術です。」(何と比較して安全か不明)、「知事の許可を取得した病院です!」(法律上当然の義務の強調)、活動実態のない団体による認定資格の掲載などがあります。科学的根拠に乏しい情報でリスクや有効性を強調し、受診や特定の治療へ誘導するものも誇大広告として扱われます。
患者の体験談
患者その他の者の主観または伝聞に基づく、治療等の内容または効果に関する体験談の広告は禁止されています。ガイドラインでは、個々の患者の状態によって感想は当然に異なるため誤認を与えるおそれがあるとされ、記述内容が広告可能な範囲であっても掲載は認められないとされています。
治療前後の写真
治療等の内容または効果について患者等を誤認させるおそれがある、治療前後の写真等の広告も禁止されています。いわゆるビフォーアフター写真がこれに当たります。
ただしガイドラインでは、術前・術後の写真に、通常必要とされる治療内容や費用等、治療等の主なリスク・副作用等に関する事項の詳細な説明を付した場合は、これに当たらないとされています。あわせて説明の掲載場所にも配慮が必要とされ、リンク先のページに置いたり、極端に小さな文字で掲載したりする形式は認められません。
なお、治療効果に関する事項はそもそも広告可能事項ではないため、後述する限定解除の要件を満たさない場合には、術前術後の写真等を掲載することはできません。
品位を損ねる表現
費用を強調した広告も、品位を損ねるものとして行うべきではないとされ、「今なら◯円でキャンペーン実施中!」「期間限定で◯◯療法を50%オフで提供しています」「◯◯治療し放題プラン」といった表現が例示されています。無料相談者への物品贈呈など、提供される医療の内容と直接関係しない事項による誘引も同様です。
自由診療を扱うなら「限定解除」の理解が必要
広告可能事項は限定されていますが、ウェブサイトのように患者が自ら求めて入手する情報については、一定の要件を満たす場合に限定を解除できる仕組みが設けられています。ガイドラインが示す要件は次のとおりです。
- 医療に関する適切な選択に資する情報であって、患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
- 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会できるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
3と4は、自由診療について情報を提供する場合に求められる要件です。自由診療のページを設けるのであれば、治療内容・費用と、主なリスク・副作用をセットで、患者が見落とさない形で記載する必要があります。
薬の名前と、他の法令
医療広告は医療法だけの問題ではありません。ガイドラインでは、医薬品医療機器等法(薬機法)第68条により、承認前の医薬品・医療機器についてその名称や効能・効果、性能等の広告が禁止されていることが明示されています。未承認の医薬品による治療の内容は、そもそも広告可能な事項ではありません。
医薬品の商品名についても、薬機法の広告規制の趣旨に鑑み広告を行ってはならないとされ、「医薬品『◯◯錠』を処方できます。」は広告できないもの、「当院ではジェネリック医薬品を採用しております。」は医薬品が特定されないため広告可能なものとして例示されています。このほか、健康増進法、景品表示法、不正競争防止法にも留意が必要とされています。
広告に当たらないもの
一方、次のようなものは通常、広告とは見なされないとガイドラインに示されています。
- 医療機関の施設内の掲示や、施設内で配布するパンフレット等(受け手が既に受診している患者等に限られるため)
- 職員の採用を目的とした求人広告(受診を誘引するものではないため)
- 学会や専門誌で発表される学術論文、講演等
- 患者等が自ら作成・公表する体験談や手記
ただし、いずれも例外があります。医療機関からの依頼や謝礼に基づく手記、第三者が運営する口コミサイトへの体験談の掲載も、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼している場合には誘引性が認められます。患者に広告と気付かれないように行われるいわゆるステルスマーケティングについても、同様に注意が必要とされています。
よくある質問
「患者さんの声」のページは作れませんか?
治療等の内容または効果に関する、患者その他の者の主観または伝聞に基づく体験談は、医療広告として認められていません。ガイドラインでは、記述内容が広告可能な範囲であっても掲載は認められないとされています。
「地域で一番」と書かなければ比較表現にはなりませんか?
最上級表現を直接使わなくても、他の医療機関より著しく優れているとの誤認を与えるおそれがある表現は比較優良広告として扱われます。ガイドラインでは「日本有数の実績」「県内一の医師数」のほか、著名人との関連性を強調する表現も例示されています。また、URLやメールアドレスによって暗示する場合も対象になるとされています。
ビフォーアフター写真は絶対に載せられませんか?
一律に禁止されているわけではありません。ガイドラインでは、通常必要とされる治療内容や費用等、主なリスク・副作用等に関する事項の詳細な説明を付した場合は禁止に当たらないとされています。ただし説明の掲載場所にも配慮が必要で、リンク先に置くことや極端に小さな文字での掲載は認められません。治療効果に関する事項は広告可能事項ではないため、限定解除の要件を満たしていることも前提になります。
キャンペーンや割引価格の告知はできますか?
ガイドラインでは、費用を強調した広告は品位を損ねる内容の広告として、行うべきではないとされています。「今なら◯円でキャンペーン実施中!」「期間限定で50%オフ」といった表現が具体例として挙げられています。費用の情報を掲載すること自体が禁じられているわけではありませんが、割安さを訴求する形での強調は避けるべきだと考えられます。
まとめ
クリニックのホームページは医療広告規制の対象であり、比較優良広告、誇大広告、患者の体験談、説明を伴わない治療前後の写真といった表現は認められていません。自由診療について情報を掲載する場合は、限定解除の要件を満たすことが前提になります。
制約が多いように見えますが、診療科目、診療時間、アクセス、医師の略歴、設備、医療安全への取組といった広告可能な事項を、正確に、探しやすく整えることは十分に可能です。派手な訴求を追うより、基本情報の精度を上げるほうが結果的に選ばれやすくなる面もあると考えられます。
ホームページや広告に関するご相談は、広告・プロモーションのページからお問い合わせいただけます。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の成果を保証するものではありません。個別の表現が規制に該当するかどうかの判断は事案によって異なります。実際の制作・出稿にあたっては、最新の医療広告等ガイドラインおよび関係法令をご確認のうえ、必要に応じて所管の行政窓口や専門家にご相談ください。
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